光や明るさの基礎整理

照明器具選択に際して、光や明るさについて整理 (1)

 

照明器具、特にLED照明に関して知っておくと便利な知識などを整理します。自分自身も、時々不確かになってしまう光に関する事項を整理することで、容易に参照できる資料を作りたいと思います。

 

1.明るさの単位、表現方法。ルーメン、ルックス、輝度

1)ルーメン、ルックス、カンデラ、輝度

LEDやランプから出た光の量は光束(単位:lm/ルーメン)といい、その光束のある方向における光の強さは光度(単位:cd/カンデラ)で示されます。

LED照明の場合、多くこのlm で明るさが示されています。しかし、このlm の値だけで明るさを考えると想定と異なる可能性があります。

LEDチップの接着方式。また、シェードなどで光の配光をコントロールしている場合には、反射、吸収の材質と効果などにより、光の出方も倍半分も違う場合があります。例えば、りシェード内で反射をさせて光の出方をコントロールする照明の場合には、照明器具から出た際に既に光が弱まっています。

そして全く異なる方向に光が出ていれば、明るくもありません。サーチライトを天井にあてた場合に、その明るさを床面で感じられるかというと違いますね。あくまで、LED照明器具が持つ光束。と理解しましょう。

 

大切な明るさを示す単位には、照度(単位:lx/ルクス)と輝度(単位:cd/m2, カンデラ/平方メートル)の二つがあります。照度は被照射面(被照面)に入る光の量を示し、輝度は発光された光が、被照射面からの反射した光が目に入ることによって感じる明るさのことです。

一般に照明器具などでは、照度計で計測しやすいこともあり、照度で話すことも多いです。

机の上での作業などや、床面に届く明るさを問題にする場合には、この照度が参考になります。

また、人が漠然と明るさを感じるのは輝度の方がより感覚的に近いと言えます。

ちょっと高級なレストランで食事をする際に、レストラン内の明るさは直接照明から飛び込む光、壁からの間接光や、食事の見え方など総合的になりますね。却って照度に当たる、食べ物が明るいというよりは、会話をする相手の姿の見え方などの方が重要だったりします。輝度により全体的に光量を調整します。

2)色温度

色温度チャート

LEDではより細かく照明器具の色温度を設定できますが、蛍光灯や、電球を選択する場合には、「電球色」「昼白色」「昼光色」などと色温度を選びます。

光色は色温度で数値化されています。物体は、高温に熱しられると、温度に応じて光の色がかわります。それを利用して、光色を色温度(K:ケルビン)で表します。

電球色は、オレンジの温かみのある色です。色温度は(2,600~3,250K程度)と低く、赤みがかった暖色系の光を放ちます。活動的なときよりも、ゆったりと落ち着きたいときに適しています。リラックス効果が高いとされる電球色は、くつろぎたい空間に最適です。そのため、ホテルのロビーや、企業の休憩室など、落ち着いた雰囲気を求める場所に適しています。

昼白色は太陽光に近いナチュラルな白っぽい光で、色温度は中間(5000K~5500K程度)であり、自然な雰囲気で活発な活動を促し、リビングやキッチン、廊下などの幅広い空間に適しています。

昼光色は青みがかった爽やかな光で、色温度が高く(5700K~7100K程度)、集中力を高めたい勉強部屋や作業部屋に向いています。

人間の活動は、太陽光から受ける色温度から影響を受けます。朝は曙。朝焼けではじまり、日中は輝く太陽つまり白色で高色温度、夜は夕暮れでまた、オレンジ色の温かみのある色に戻ります。

LED照明器具によっては、このバイオリズムに従い、自動的に色温度を調整する器具もあります。過ごす環境に応じて適切な色温度を選ぶことが大切です。

ホテルの部屋は、睡眠やリラックス効果の高い、暖色系が選ばれているのもその理由です。

3)演色性

 

車やファッションの店舗、Show Room では対象物をきれいに見せることが大切です。

また、設計や美術的な仕事においても、色の見え方は作業の質に根本的な影響を与えます。

 

光によるものの見え方を演色性といいます。たとえば同じ赤いリンゴでも、太陽光の下と蛍光灯の下では色の見え方が微妙に違うことがあります。これは光源の「演色性」の違いによるものです。

代表的評価方法である、平均演色評価数(Ra)は、光源が物体の色をどの程度自然に見せることができるかを表す指標です。太陽光を100として0から100で表します。

国際照明委員会(CIF)で評価方法が定められ、日本では “光源の演色性評価方法 (JISZ8726)”として規格化されています。

Ra: average of Rendering index

Ra = 160 - 4.6ΔE

ΔE(色素):R1 ~ R8の基準光と比較した色ずれの平均値、100が最高値

R1~R8 : 赤系統から紫系統までの試験色

R9~R15: 特殊演色評価数として追加されたもの、R15は日本で追加した日本人女性の平均的な色票で評価、ちなみにR13は西洋人の肌色

注)海外製品では、CRI(Color Rendering Index)と書かれる場合もありますが、同じものを指します。

従来よく使われて来た白熱電球の光はフィラメントが高温で発光する「熱放射」で、太陽光と同じように連続スペクトルを持っているため、物体の色を非常に自然に見せることができます。そのため、Ra ≈ 100(最高値と同等)として扱われてきました。
しかし、最近LED電球や照明に使われている、LEDは逆に様々なスペクトルをもつ特徴があります。例えば、赤色のLEDや、青色のLEDなどその色とスペクトルを持ちます。

つまり、LEDと白色電球はその光かたが異なりますので、同じ強さの明るさだからと白熱電球や蛍光灯と同じ様に色合いが見えると考えるのはそもそも間違いなのです。

特に商品を展示して販売するスーパーマーケットなどでは、演色性が足りないと本来は新鮮でおいしい野菜や肉などもくすんだ、新鮮に感じられない色に見えたりします。また、ファッションのお店では、その洋服の色合いがお店の中と、外に出たときと違う色に見えてしまいます。果物の選別作業などにおいては、演色性は作業の効率やエラーにつながります。

演色性はLED照明を選択するにあたってとても大切なパラメーターです。

 

ショートコラム)
LEDは電流を流すと発光する半導体(ダイオード)の一種で波長の長い(エネルギーの低い)赤色から開発が始まりました。それから、どんどん波長の短い(エネルギーの高い)色の半導体(LED)が開発されてきたのです。そのため、昔は、LEDと言ったら赤色のLEDが主に使われていた時期もありました。太陽光や白熱電球の代替えにするには、スペクトラムが足りなかったんですね。今、ディスプレイがLEDで作られるまでになりますが、「光の三原色(赤・緑・青)」を揃えることが必要です。赤、緑と来て、そこからの青色のLEDの開発がすごく大変でした。長年の大きな技術的な壁で、無理かも?と思われていた時期があったのですが、日本の研究者 中村修二氏、赤崎勇氏、天野浩氏により青色のLEDが発明されたのです。この3氏は2014年のノーベル物理学賞を受賞したことは、皆さんもご存じだと思います。この発明により、世界の照明に革命をもたらした、省エネルギーで長寿命な白色LED照明の実用化が可能になったのです。

ものの色の見え方は、明るいと鮮やかに見える傾向があります。

人間の目は暗くなると、色の違いが見えなくなりますので、「明るい。だから色合いも良く見える。」と錯覚しがちです。

明るいからと言って演色性に優れているとは限りません。実際に、LEDでより明るい色合いを出すことと、色々なスペクトラムをまんべんなく出すというのでは、使用するLED Chipの選択も異なってきます。明るさを強調したLED照明と演色性を高めたLED照明を比べるとその光束が異なりますので、同じLED照明でも演色性を高めたものは光束量が減るようです。そのため、明るさだけでなく仕様書を見て、Raの数値がどのくらいか確認することはとても大切です。

 

スペクトラムを選べるということは、LEDを使って特定の色をより強調することもできることにもなります。

例えば精肉売り場などで、肉を新鮮においしく見せるためにわざとその波長のLEDを追加することでその色合いを強くすることも可能になります。野菜も取り立ての緑に見せることも同じ様にできます。

スーパーで見たらおいしそうだったのに、家で料理の前に見たら色あせている。そんな場合ですね。という訳で、LED照明では、従来の Raに加えて、

Rf : Fidelity Index (色の忠実性)

Rg: Relative Gamut (色の鮮やかさ)

が追加されることになりました。

これは最近の規格ですが、照明器具でこの2つが書かれているケースもあります。

先ほどのスーパーの肉の例を考えると、確かにこの「色の忠実さ」「色の鮮やかさ」はLED照明ならではの指標と言えますね。

 

 

 

4)BUG評価

BUG評価とは、照明のどこに光が行くのかを示す方法です。

BUGは Backlight, Uplight, Glare (バックライト、アップライト、グレア)の略です。

バックライトは、器具の後ろに向けられた光、アップライトは照明器具の水平面より上に向けられた光、グレアは照明器具から高い角度で(つまり目に直接飛び込んでくるような確度で)放射される光の量です。

これは、照明学会(IES:Illuminating Engineering Society )で定義され国際ダークスカイ協会(IDA: International Dark-Sky Association)によって施行された閾値に基づいて、それぞれのゾーンの最大光量に応じて、0~5の値が割り振られます。低いほど望ましい値です。

例えば、

右のような例では、大きく上方に向けた光が大きいことを示します。

昨今、上方の空間に向けているような光や、グレアをもたらす光が環境の観点、また、人の健康の観点から考える気運が出てきています。

例えば、三鷹市では国立天文台を抱えることもあり、三鷹市光害防止指導指針 というものがあり光害を防止指針が策定されています。光害という認識も大切になってきています。

また、LED照明はその構造より様々な加工や工夫ができるため、光害もまた。ということだと思います。この評価もLED照明が普及した故ともいえます。

 

グレアに関しては、次の「光や明るさの基礎整理(2)」で詳しく触れたいと思います。

BUG例

 

 

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